イースIVとは?PCエンジン版が“なかったこと”にされた理由とリリア消滅の悲劇

天空の神殿にいる翼の生えた女神のイメージ ゲーム

君はアドル=クリスティンを知っているか?

そんなおなじみの一文から始まる、PCエンジンユーザーにはほぼ説明不要のキラータイトル。
それが『イース』だ。

「ファミコンといえばスーパーマリオ」
だとすれば、
「PCエンジンCD-ROM²といえばイース」
それくらい、このハードを象徴する存在だった。

PCエンジンを選んでよかったと思わせてくれた作品

私がPCエンジンを購入した理由や経緯については、別記事でも触れている。

→なぜ私はスーファミではなくPCエンジンを選んだのか|高校時代のDUO購入体験談

→PCエンジンで2年待ったのに未完成!?|モンスターメーカー闇の竜騎士の思い出

正直、期待していたゲームに裏切られた経験もあった。
それでも「PCエンジンを買ってよかった」と思えたのは、この『イース』に出会えたからだ。

不遇なナンバリング「イースIV」

そんなイースシリーズの中でも、いまや“なかったことにされている”かのような扱いを受けているナンバリングがある。

それが『イースIV The Dawn of Ys』だ。

本記事では、イースという作品そのものの魅力とともに、このイースIVの立ち位置について触れていく。

著者所有のイース4のパッケージ写真
ハドソンが制作した、当時の熱狂を感じさせるパッケージ

そもそも『イース』とはどんなゲームか

1987年にPC-8801向けに産声を上げた『イース』。
当時、パソコンを持っていなかった私が、ファミコン版を経てようやく「これが完成形だ!」と魂を震わせたのが、1989年のPCエンジン版『イースI・II』だった。

当時は現代のような大容量ゲームと違い、ヒットすれば驚異的なスピードで他機種へ移植される熱い時代。
その数ある移植の中でも、PCエンジン版の完成度は群を抜いていた。

では、すでに他機種でも遊べたイースが、なぜ「PCエンジンの代表作」とまで言われるようになったのか。

それは『イースI・II』の移植が、理想形に近い完成度だったからにほかならない。

イースエターナルのビジュアルブックの表紙の写真。著者所有のもの
イースⅠのヒロイン・フィーナとリリアという双子の女神。赤毛の戦士が主人公アドル

イースIVが“なかったこと”扱いされる理由

『イースI・II』の後にIIIが発売され、1993年に『イースIV』が登場する。

作品自体の評価は決して低くなく、むしろ名作として語られることも多い。
ただし、このIVには少し複雑な事情がある。

PCエンジンはハドソンとNECホームエレクトロニクスの共同開発ハードだが、
ハドソンが続編制作を打診した際、ファルコム側は自社開発の『イースV』や『風の伝説ザナドゥ』
に注力していた時期でもあり、開発をハドソン側に委託する形となった。

その結果、「シナリオ原案と音楽はファルコム、ゲーム制作はハドソン」という形で開発されることになった。

さらに同じ原案をもとに、スーパーファミコンではトンキンハウスから
イースIV MASK OF THE SUN』が発売されるという、やや異例の展開になる。

加えて2004年にはタイトーからリメイク版も登場したが、こちらは評価のあまり高くないSFC版をベースにしていたため、評価はやや微妙なものにとどまった。

公式設定としての「セルセタの樹海」

その後、ファルコム自身の手によって『イース セルセタの樹海』が登場する。

これにより、従来のイースIVは公式の正史から外れ、いわばパラレルワールド的な位置づけになってしまった。

イメージとしては、小説版『機動戦士ガンダム ベルトーチカ・チルドレン』よりも、劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が正史として扱われるようになった、あの関係に近い。

セルセタの樹海をイメージした巨大な樹のイラスト

イースIVとセルセタの樹海の違い

両者は「同じ題材を扱った別作品」と言っていいほど違う。

イースIVは『I・II』の流れを色濃く受け継ぎ、古代文明や神話をベースにした“冒険譚”としての色が強い。
過去作とのつながりを感じさせる展開も多く、古参ファンにはたまらない内容だ。

一方『セルセタの樹海』は、世界の成り立ちや国家・歴史といった要素に踏み込み、より現代的で重厚なストーリーになっている。

登場人物も増え、Ⅳにも登場している人物もビジュアルも大きく刷新されている。

これはゲームとはいえやはりビジネスであり、シリーズを現代に適応させるため、ある意味では仕方のないことかもしれません。

古参のノスタルジーだけでは、メーカー側も現代のビジネスとして成り立たないはずですから。

イース4のパッケージの裏面の写真。著者の所有物
リーザ:左下の金髪の娘 カーナ:中央右、茶髪、青いバンダナの人。ほぼ原形はない

リリアが登場しない

ただし、古参ファンにとって大きな衝撃だったのが、リリアが登場しない点だ。

リリアと言えば、初期イースを象徴するヒロインであり、数いるヒロインの中でも絶大な人気があり、イースの正ヒロイン的なイメージがある。

我々世代でのイースヒロインで一番人気があるのは、Ⅰに登場するフィーナではあるが、フィーナはそもそも女神であり、人間ではないので決して結ばれることはない立場であるという事で、正ヒロインとしてはノーカン扱いである。

しかしリリアは違う。
フィーナやレアと違い普通に今を生きる人間であり、主人公アドルにさえその気があれば結ばれることは可能なのだ。

そしてリリアに正ヒロインというイメージが付いているのは、このイースⅣの印象があるからだ

イースtheアートブックの表紙の写真。著者の所有物
画面上部の茶色髪の娘がⅡのヒロイン、リリア。中央がⅠのヒロイン、フィーナ


イースのヒロインの中でも、主人公のアドルの後を追って、別のナンバリング作品に登場してきたヒロインは、リリアしかいないのだ。

そのため「実質的な正ヒロイン」と感じているファンも多い。

しかし、シリーズ後期から入ったプレイヤーにとっては存在自体が馴染みが薄い可能性も高い。
セルセタの樹海で再登場したところで

この人誰?

みたいなことになる可能性も高いのです。

更にいえば、今やイースのヒロインで一番人気なのはⅧに登場するダーナであり、ファルコム公式からヒロインで唯一フィギュア化されたのも、フィーナやリリアではなく、ダーナだけなのだ。

そう考えると未登場となってしまったのも理解はできるが、やはりちょっと悲しい。

イースのリリアをイメージした画像

かつての象徴的なヒロインが、数ある登場人物の一人になってしまったことに、時代の流れを感じずにはいられない。

ドギがアドルの唯一の相棒としてシリーズ通して登場するように、リリアにもアドルの行く先々で後を追いかけてくる名物ヒロインとしての役割を与えてほしかったと個人的には思う。

イースは“冒険日誌”の物語

イースシリーズには、「冒険家アドル=クリスティンが残した100冊以上の冒険日誌をもとにしている」という設定がある。

そのため、作品のナンバリング順と物語の時系列は一致していない。

たとえば、『イースI・II』は若き日の冒険だが、その後の作品ではより年齢を重ねたアドルが登場する。
シリーズ全体を俯瞰すると、一人の冒険家の生涯を断片的に追っているような構造になっているのが特徴だ。

分かりやすいように、次の表にまとめてあるのでご参照ください。

順序タイトル(副題)アドルの年齢備考
1イース・オリジン-(700年前)アドル登場以前。シリーズの「根源」の物語。
2イースX -NORDICS-
17歳北の海オベリア湾での冒険。ドギとの出会い
3イースI(失われし古代王国 序章)17歳エステリアへの漂着。
4イースII(失われし古代王国 最終章)17歳前作から直結。天空の国イースでの戦い。
5イースIV(セルセタの樹海)18歳記憶喪失から始まる樹海の探索。
6イースIII(フェルガナの誓い)19歳相棒ドギの故郷フェルガナ地方での異変。
7イースV(失われた砂の都ケフィン)20歳錬金術の都を巡る冒険。
8イースVIII    (Lacrimosa of DANA-)21歳絶海の孤島「セイレン島」での漂流生活。
9イースVI      (ナピシュテムの匣)23歳世界の果て「カナン諸島」での冒険。
10イースVII23歳アルタゴ公国の巨獣を巡る物語。
11イースIX       -Monstrum NOX-24歳監獄都市バルドゥークと「怪人」の謎。

世間との認知ギャップ

かつて地上波で「テレビゲーム総選挙」という番組が放送されていた。

私は「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」と並び、『イース』こそが日本三大RPGの一角だと本気で思っていた。

しかし結果は、まさかのトップ100圏外。

イース自体プレイしたことはなくても、存在はみんな知っているものだと思っていたので、まさかここまで世間に認知されていなかったという事実に衝撃を受けた。

とはいえ、イースが色あせるわけではない。
むしろ、知る人ぞ知る名作として、長く愛され続けているシリーズだと思っている。

翼を持つ人たちが暮らしている街のイメージイラスト

まとめ

イースは、PCエンジンというハードの魅力を最大限に引き出した象徴的な作品だった。

その中でも『イースIV』は、作品としての評価は高いにもかかわらず、開発経緯や公式設定の変化によって“不遇な立場”に置かれてしまった特異な存在である。

そして『セルセタの樹海』の登場により、シリーズは新たな方向へと進んだ。

時代に合わせて変わっていく部分と、変わらずに残ってほしいもの。
その両方があるからこそ、イースという作品は今も語られ続けているのだと思う。


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